忘れえぬ慕情

　長崎のある造船所に、フランスからマルサック技師が赴任して来た。彼は堀技師長に紹介された呉服屋の娘、乃里子に心惹かれていた。彼女は弟と妹の面倒をみながら店を経営していた。乃里子を通じて日本に興味を持ち始めたマルサックは彼女のフランス語の先生リッテルの離れに住居を移す。リッテルの妻、慶子は乃里子の友人だった。しだいに日本の生活に融けこんでゆくマルサックに、乃里子も愛情を抱き始めるが、そこへ、マルサックの昔の恋人で作家のフランソワーズが、日本の取材の傍ら訪ねて来た。フランソワーズの誘惑に、マルサックがよりを戻しそうで乃里子の心は乱れる。やがて長崎に巨大な台風が迫って来る…。